会員各位へ(日本精神保健福祉士協会兵庫県支部)から

支部長あてに送られてきた内容です。

他人事ではありませんし、皆さんもご覧ください。一緒に考えていく必要がある問題だと思います。

医療機関に所属している精神保健福祉士、組織の一員である精神保健福祉士は、どうあるべきかについては日頃から考えておく必要があると思います。ともすると、人は自分が所属する組織を守る側につかざるを得ない状況もあると思いますが、その中で専門職としてどうあるべきかは、日ごろから考えたり、専門職としての行動指針を考える必要があると感じました。

取りあえず、ご覧ください。

夏目宏明

>都道府県各支部長の皆様

いつもお世話になっております。

兵庫県支部の北岡です。

神出病院事件への対応については、支部長会議や近畿ブロック会議でも報告させていただきましたこと、

また入院患者への意向調査につきましては、ご協力のお申し出をいただき、厚く感謝申し上げます。

日本協会の権利擁護委員会の方々にも、何かとご協力いただき、また8月の研修会でも取り上げていただきますこと、誠にありがとうございます。

神出病院においては、ニュースでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、

新院長が第三者委員会を設置することを表明されています。

入院患者を虐待で元看護師ら有罪判決の神出病院 第三者委員会を設置へ

神戸新聞NEXT

現在、準備が進んでいるようです。

兵庫県下の関係団体と連携した働きかけが実り、ようやく事件の全容解明につながることと思っております。

患者意向調査は、コロナ禍に阻まれ、だいぶ準備が先送りになってしまいましたが、ようやく神戸市との実務協議に入ることができました。

現在、仕様書と調査実施要項について内容を具体的に詰めているところです。

日本協会および近畿ブロックの皆様からも、ご協力いただける旨伺っておりましたが、なかなか進まずご心配をおかけして申し訳ありませんでした。

患者意向調査票ですが、日本協会権利擁護委員会が作成くださった「虐待事件における入院患者意向調査ツール」を参考にさせていただき、調査目的と時間に合わせて、項目を絞り作成する予定です。

調査ツールにつきましても、兵庫県協会だけで考案するのは大変なことで、時間もかかります。

このように貴重な資料の提供をいただき、ご支援くださることに厚く感謝申し上げます。

意向調査票内容や調査員については権利擁護委員会の方や、近畿ブロックの方にもご相談できればと思っており、また改めてご連絡させていただきます。

具体的募集は秋以降になる予定で、遅くとも年度内には終了させる計画です。

8月22日(日)の精神医療・権利擁護委員会主催のオンライン勉強会においては、神出病院事件対応についてご報告する機会をいただき、大変ありがたく存じております。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

ところで、先日NHKのETV特集「日本最大の精神科病院1年の密着取材!精神医療の実態に迫るルポ」を見ました。

東京都立松沢病院のルポでしたが、衝撃でした。

Y病院から転院してきた患者が「病室にコロナ患者が複数集められ、外から南京錠で鍵をかけられた。病室の真中にポータブルトイレを置かれ、何の仕切りもない中で排泄を余儀なくされた。」という証言がありました。

神出病院がインフルエンザ患者を集め、外からドアにテープを貼り不適切隔離したことと同じですし、

人の心と尊厳を破壊するような行為に恐ろしさを感じました。

7月の東洋経済オンラインの記事も驚きました。

神出病院事件も取材してくれた記者さんの記事です。

報徳会宇都宮病院の「入院治療」あまりに驚く実態 各種専門家から厳しい指摘、山のようなクレーム

東洋経済オンライン

精神科医療の歴史を変える凄惨な大事件を起こした宇都宮病院が存続していたこと、過去の反省も全くないような行為に衝撃を受けました。

心ある嘱託医があまりの惨状を訴えていますが、行政の改善命令等には発展していないようです。

これらの人権侵害を知ったなら、我々も関係団体とともに、何らかの働きかけが必要なのではないかと思うばかりです。

たまたま精神疾患になったばかりに、身も凍るような扱いを受ける恐怖と絶望を思うといたたまれません。

社会にも「精神科病院は恐ろしいことをするところだ」と、逆に偏見を広めることになってしまいます。

一生懸命いい実践をされている病院も迷惑を被ることでしょう。

精神障害者の社会的復権については、進んでいるところもあるかとは思いますが、まだまだ呉秀三の時代から全く進展していない現実があることに震撼いたします。

精神医療関係者が口々に「神出病院事件は氷山の一角」と言っていたことの証明が次々と出てきます。

これらの病院にも精神保健福祉士はいるのだと思いますが、雇用されているという立場から難しい状況に悩まれておられるのかもしれません。

何らかのことを目撃しながら、また耳にしながらもどうしていいのかわからなければ(神出病院の精神保健福祉士も職域を制限されていたようです)

単に批判するのではなく、専門性が発揮できるように、我々職能団体として相談を受けることや、一緒に改善に向けて考えるなど

同じ仲間が専門職の力を発揮できるよう支援することが必要かと思います。

(ちなみに、遅くなってしまいましたが、当協会として神出病院の精神保健福祉士へのヒアリングも近く行う予定です。)

長々と申し述べ、失礼いたしました。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

兵庫県支部 北岡祐子